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ノートを知るNote

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作者:三浦安子  出版社:日本キリスト教教団出版局  出版年:2011年12月 

『ことばの力――私の書写ノートより』

『暮らしの手帖』の花森安治、大橋鎮子氏に啓発されて

「はじめに」より
1978(昭和53)年の4月末のことでした。
連休の初日、駅前の書店の片隅に売残っていた『暮らしの手帖』をパラパラめくっていますと、次の文章が目に飛び込んできました。

花森家に伺ったことがありました。
そのとき、これをごらん、といって本棚にある、300冊近い大学ノートを見せてもらいました。それは花森さんが、自分の好きな作家の文を、ひき写したものでした。それも、ある一文を、何回も何回もひき写してあるのです。
いい文章を書くには、いい文をよむのがいちばん大切なことだ、よまなければ文章はよくならない。ぼくはこうやって、いい文章を、何度も何度も書いて覚えた。この方法も決してわるくない。君もひまをみて、始めることだ、と言われました.。
『編集長花森安治のこと』(大橋鎮子)『暮らしの手帖』Ⅱ 53号(1978 March-April)197頁
「そうだ、私も、心に残った文章を書写しよう」と私はその日思い立ち、読んだ本の心に残った箇所を書写し始めました。そしてその日から33年の月日が経ちました。語学教師としての勤務、子育て、老人介護の日々を縫うようにして、「書写」を細々と続けてきました。多忙の余り、読んだ本の表題しか書けない時期もありました。
2年前に定年退職し、お年寄りもみな世を去られて、手許にはたった7冊の「書写ノート」が残りました。いま読み返してみますと、この7冊の大学ノートに写されている言葉が、この33年間、その時期、その時期の私を支えてくれたことに気づきました。この年月の間に、学童保育の拡充や「男女雇用機会均等法」制定、介護保険の実施などにより、「この課題はすでに解決された」と感じられる言葉もあります。それで、ノートに写されている言葉のごく一部分を書き出して、当時と今の私の思いをメモし始めました。