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124-2
作者:唐沢俊一  出版社:幻冬舎  出版年:2000年8月 

『古本マニア雑学ノート』

古書展では目の位置より少し高いところに良い物件が並べられることが多い。

「エピローグ」より
「走らないでくださいッ! お静かに願いますッ!」
エレベーターのドアが開いたとたん、デパートの店員さんの声も聞かばこそ、あふれるように走り出た客たちは、遅れを取り戻そうと、一斉に会場に向かって走り出した。

手にメモ用紙があるのは、まず抽選会場の受付に貼り出してある、当選名簿(大学の合格者名簿のようなもの)の前に行き、目当ての本が当たったかどうか確かめようという人々である。抽選は大体、外れを考慮して、多め、多めに注文するから、たまに何かのせいで、注文したものが全部当たってしまったりすると、サイフが悲鳴を上げることになる。
抽選本は逃げないから後回しで、棚をとにかくあさる者もいる。だいたい、古書展は書店別に出しているから、その書店名で品揃えがわかる。目の位置より少し高いところに、だいたいいい物件は並べられることが多い。価値を棚の高さで表現しようという、古書店員の心理のあらわれだろうか。単に、目玉商品を目立たせたい、という心理かもしれない。
僕もとにかく、目当ての書店のコーナーに急いだ。手にカゴを持ち、その中にバッサバッサという感じで本を放り込んでいくツワモノがいる。自分の本はもちろん探しながら、こういう、他人の取った本にも目を走らせなければならない。このようにバッサバッサと本をとっても、その人物がその本を全部買うとは限らないからである。
こういう、人の多い古書展でのコツは、目についた本はとにかく、手もとにとっておくことである。買うか買わないかは、ある程度棚を見回ってから、ゆっくり決めればいい。だから、しばらくして、さっきのバッサバッサ氏は帰ってきて、本を何冊かは棚に戻す。そこを狙うわけである。ただ、良心的な人物ならいいが、そうでない場合、最初にあった場所とは違うところに本を戻していく人もいる。だから、カゴの中に、自分の欲しかった本を投げ込んでいる人を見かけたら、しばらくその人の後について回らなければならない。